稀に回れ 16-101012
歯車はその形状からして「回転すること」を宿命とする部品です。しかし「稀に回れ」という命令はその宿命を否定し、機械を機械たらしめる根拠を静かに解体しています。怠惰の賛美か、効率主義への反逆か。いずれにせよ痛快です。
■アーティスト
フランシス・ピカビア [ Francis Picabia ] (1879-1953)
フランス生まれの画家で、ダダイズムとシュルレアリスムの中心的人物のひとりです。生涯を通じてひとつの様式に留まることを拒み、印象派から始まりキュビスム、抽象絵画、機械絵画、ダダ、そして具象へと絶えず変貌し続けました。その変節ぶりは批判を受けることもありましたが、ピカビア自身は矛盾を楽しむように様式を乗り換えていきました。特に注目されるのが「機械絵画」の時代です。人間の感情や関係性を機械の図面のように描いた作品群は、冷徹でありながら奇妙なユーモアをはらんでいます。愛や欲望を部品と歯車で表現するその手法は、当時の芸術界に挑発的な問いを投げかけました。既存の価値をすべて笑い飛ばすような姿勢はダダの精神そのものであり、マルセル・デュシャンとの交流がその過激さに拍車をかけました。何者にも定義されることを拒んだ画家。ピカビアの作品の前では、「芸術とは何か」という問い自体が宙吊りになります。
■作品概要
Tournez rare (1919)
稀に回れ──命令なのか、諦めなのか、それとも皮肉なのか。1919年、ピカビアはキャンバスいっぱいに巨大な歯車と同心円を据えました。機械は本来、止まらず回り続けるために存在します。しかしこの機械には「稀にしか回るな」という指令が刻まれています。効率と生産性を至上とした近代工業文明への、これほど簡潔な異議申し立てがあるでしょうか。灰色の重厚な地に、黄土色の歯が噛み合い、中心には赤い一点が静かに燃えています。赤い点線の円弧は回転の軌跡か、それとも回転しなかった痕跡か。機械は動くことを義務づけられた存在です。ならば動かない機械とは、何者でしょう。
■サイズ
・A4/ 210mm×297mm
・A3/ 297mm×420mm
・A2/ 420mm×594mm
■材質
半光沢紙使用
光沢を抑えた仕上がりで反射が少なく、どの角度からでもきれいに鑑賞できます。
■キーワード
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